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Creative Café Vol.07 およその数でつかまえて 2/3pict

2010.09.29

DSC03211_2.JPG野原:さっき、分数で表すときれいですけど小数で表すとちょっと汚い、っておっしゃったんですけど。
村上:はい。循環してないから分数で書くときれいっていうのは、きれいですよね。
野原:興味深いです。
村上:これきれいですよね。これはきれいでしょ(笑)。
これを電卓で計算するときも、「たす2は」って繰り返せばいいですよね。繰り返していられるものって、なんかきれいでしょ? 世の中にある美の基準のひとつとして、対称性っていうのがありますよね。点対称とか線対称であれば、なんとなくきれい。あるいは、繰り返し。繰り返した模様ってのは、なんとなくきれいですよね。で、これの左辺もやっぱり繰り返しの美ですよ。しかも何がいいかって、この2がだんだんちっちゃくなっていって、無限の彼方に消えていく。その「てんてんてん」に情感、無限の情感が。(笑)
津田:先生、それは、何かこう、秩序があって、宇宙の美しさをお感じになるということですか?
村上:そうですね。さっきの循環してるっていうのも、目に見えてる。もちろん循環している小数も、小さな桁のほうにいくとどんどんフェードアウトしていくんです。フェードアウトするんだけど、全体を見渡す立場から見ると、また同じのが繰り返されてるというのが、ちょっと怖いようでもあり。大体美って、怖さが裏にありますよ。違いますか?
で、なんで0.41421356......があまりきれいじゃないかっていうと、数字の出方がいい加減、ランダムだ。実はランダムじゃないんだけど、ランダムっぽい。
野原:ランダムなものには、あまり美を感じない?
村上:完全にランダムなら、それはそれでいいんですけど、中途半端にランダムなんですよね。
ルート2っていうのは、正方形の対角線の長さです。そのある意味ではこう無限で、ある意味ではこういう、あまりきれいじゃない形をしている。数学者は多分あれですね、こういう一見秩序がないものを、こういうふうに変えたいんですよ。で、さらに言えば、「一辺が1の正方形の対角線だ」って言った時点でもう、これでもう、究極の美しさっていう感じです。
:ロシアの人形みたいですね。
村上:ああ、マトリョーシカね。あれも無限ではないですよね。ただ、あれが、ぼくなんかが見てて嫌なのは、だんだん細工が粗くなります。あれをなんとかして、内側が外側を本当に縮小したものならいくらお金出しても買いますけど。やっぱり多分これ、違いまして。だから、ルート2の連分数の場合はどこからマトリョーシカの人形を始めても、まったく同じものなんですね。そこがその無限の美しさ、無限の不思議さです。有限じゃないから。

円周率をおよその数でとらえる

村上:じゃ、次行きましょう。次も同じようなので。今度は奇数の逆数を足したり引いたりしましょう。だから1から始めて、次の「3分の1」を引きます。次の奇数は5ですから、「5分の1」を足します。次、「7分の1」を引きます。「9分の1」を足します。てことを、何度も何度も繰り返していくと、どっかにいきます。これが、なかなかまとまんないです。1から201までだから、100個の奇数を足したり引いたりしたら、0.78787878335......。次、同じことを1,000回、だから、1から、「2001分の1」までを足したり引いたりすると、0.7856......。何度も何度も計算していくと、こういう数になるはずですが、これは一体なんでしょう?
:サイエンスカフェなので、わかりやすくお願いします。(笑)
村上:これを4倍するとどうなるか。0.785を4倍すると3.14。見慣れた数になる。実際、これ、ずっと先まで足したり引いたりしたものを4倍すると円周率πになります。奇数を足したり引いたりすること。覚えやすいですね。「1ひく3分の1たす5分の1ひく7分の1たす9分の1......」、これを一生かかって計算すればπは出ます。だから昨今、スーパーコンピューターの速さを競うので「πを何桁計算した」とかってありますが、そんなコンピューターに頼らなくても、我々できるんです。あの、ぜひ、やってみて、人生を浪費して下さい。(笑)これ、とんでもないですよ。10万回やってもこれで、もう、下、小数点以下3桁で違ってるんだから、よっぽどのことをやんないと。たとえばいま、これでかろうじて3.14ですか。コンピューターやってる人は精度っていうのを考えると思いますが、これは精度が非常に悪いです。なかなかお薦めできないやり方ですが、それでも、小学生でもできるπの計算方法です。昔の日本人の和算なんてやってる人は、もっと利口なやり方で、かなりの桁まで円周率として計算していました。
このπっていう数は、さっきのルート2に比べると格段に変な数です。さっきのルート2っていうのは、先ほどお見せしましたように、「2分の1」とか、2を足して逆数を取るっていうことできれいに書けたんですが、πにも似たような法則があります。ただ、似たような計算はあるんですけれど、ルート2に比べると循環っていう感じではないです。πを出すような方程式っていうのはありません。だから「xの5乗たす3x2乗ひく1」の解がπだなんてことはあり得ないってことは知られてます。そういう意味では「超越数」って言われてます。あるいは、「超越無理数」。超、単なる無理じゃなくて、超無理、超越した無理という意味で、そこまで突き抜けると、それはそれで面白いです。えーと、なんだっけ、πっていうのは、ひとつの面白さっていうのは、奇数を足したり引いたりしたら、なぜか出てくるものがあります。
:スーパーコンピューターの円周率の計算もこれと同じ原理なんですか?
村上:いや、多分違います。スーパーコンピューターなんかだと、まずコンピューターの性能を上げるのと同時にアルゴリズムを改良してくはずで、こんな収束の遅いことをやってるとは思いませんね。もっとややこしいことをやってるんじゃないかな。私は知りませんけど。それこそウィキペディアででも調べていただければ。あるいはどっかで企業秘密が出てくるかもしれません。
πを求めたければ、こんなことやるより、こんな円い物の周りをひもでやって、測ったほうが、はるかに正確な数が出せる。(笑)別にこんなこと、こんなことして計算するんじゃなくて、ひもでやったほうが速いです。

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