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Creative Café Vol.07 およその数でつかまえて 3/3pict

2010.09.29

:すみません、すごい基本的なことなんですが。一番最初にπを決めた人っていうのは、どうやって決まったんですか?
村上:それは、円周と直径の比です。
:あっ、長さで、測って?
村上:ええ。測ってって言うか、もともと概念的なもので、それを言い出すと「長さとは何か」ってことになりますが。直線っていうか、線分の長さってのはわかりますよね。だから、円を線分で近似して、正五角形とか正六角形、正七角形でその長さを測って、それの、辺の数を増やしたときに、それの直径に対する比の極限です。それが円周率、正確に言うと。だって、曲がってる物の長さってわかんないですよね。だから、円周率って、もともと3.14って決まったんじゃなくて、円周の長さと直径の比として決まって、それを計算しようってなって、正多角形で近似したりして計算していったわけです。正多角形を円の内側に接するように描いたのと、外側で接するように描いたのを考えると、外側のほうが大きくて、内側のほうが短いんです。その差がどんどんちっちゃくなっていけば、円周率に近づいていくかなっていう考えで計算したのが一番最初です。
:日本では、最初πじゃなくて、ぼくは小学校のとき3.14で計算、およそってことで習ったんですけど。海外で、πは確か中学だったと思いますが。
村上:日本だと小学校4年、5年ぐらいに習って、一応教科書で出てるのは、円を描いて円周を測ってみようってのがあって、実際測って「直径の約3.14倍になってるね」って話をしてみるんですけどね。だから3.14から教わったわけではないんです。誤解があるようですが、そうではないです。一応、円の直径と円周は比例しますので、その比例定数として円周率っていうのが出てきます。それを円周率と言って、約3、あるいは約3.14と習いました。という形になってます。ただ、小学校の先生は、算数が嫌いな方がたいそう多いので、もう面倒くさいから「3.14と覚えなさい」「円の円周の長さは直径に3.14かければ出ます」と教わった可能性が大いにあります。ご愁傷様です。そうではありません。
:この例のように、規則的に引いたり足したり、引き算足し算だけじゃなくて規則的に加減乗除することで、πに対して何分の1かっていう、そういう関係性が求められるパターンっていうのは。
村上:かなりあります。多分、数えられないと言うとまた数学的じゃないですけれど、いろいろありますよ。
:古代から?
村上:古代から。そうですね、計算機がない時代に、わりと、なんて言うか、何十桁って正確な計算したって残ってますから。さっき言いましたように、正多角形の長さっていうのは、加減乗除で計算できますから。

鑑賞できる数学

b:一つ前の、先生がおっしゃった分数は美しくて、小数だと美しくないと、気持ち悪いとかっていう場合なんですけど。それが共感できる人もいると思いますし、共感できない人も、まあ先ほどもいらしたんですけど。
村上:はい、はい。
:先生的に、どれくらいの人たちが、さっき言った、共感できるっていうか、美しいというふうに思われてるって思いますか?
村上:いい質問ですね。大半の人は何も考えてないと思いますね。だから、ルート2は何かっていうのを説明するのに時間がかかっている。いつも思うんだけど、数学なんかも芸術と同じで鑑賞できる数学っていうのがあっても非常にいいと思います。ルート2もその一環だと思ったんですが、これがちょっと絵とは違うんですよ。だから、ルート2を、ああやって分数で表したのと小数で表したのを比べて、どっちがきれいかで共感してくれる人がどれくらいいるか。ほとんどいないでしょうね。大体、やっぱり、これは日本だけじゃなくて世界的な傾向だと思いますが、算数とか理系とかっていうのはどんどん嫌われていて。なぜかって言うと、やっぱり難しいから、面倒くさいから。で、その根底にあるのはやっぱり「なんでも覚えなさい」。理解する、させるのが面倒くさいから、覚えさせようってのがあると思うんですが、もうちょっとやっぱり我慢して、美しいなと思えるまで繰り返し鑑賞させれば、ちょっとムードは変わる。だから、さっきの「ルート2ひく1」をああいうふうに表したのも、根底にあるのはやっぱり、ぼくは小学校のころ、さっきも言いましたけど、分数を小数で表して循環して「おおっ」って喜んでた変わった人間なんで、そういう人からみれば「おおっ」って思いますよ。だから、そういう、なんか、面白いな、あるいはきれいだなと思うまで、簡単なところで繰り返しやらせれば、ちょっと変わっていくかもしれません。ちょっと、質問とは答えがずれちゃいましたが。そういう意味で、質問に答えようとすれば、絶望的に低い場所じゃないかと思います。それをもうちょっと上げる努力を我々数学者はするべきだと思います。

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