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LSM招聘レポート2015/12/2

2016.03.30

【特別セミナー】

 2015年12月2日、東工大百年記念館にて、ロンドン科学博物館と東工大の共同セミナーが行われました。科学技術と私たちを結びつける貴重な場である「博物館」を取り上げ、ロンドン科学博物館での取り組みを参考に、東工大博物館をより魅力的にするための施策をワークショップ形式で検討するというこのイベント。国境を超えた初の試みに、東工大の学生を中心に30名以上が参加し、白熱した議論は2時間を超え大盛況のうちに終わりました。

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 二部構成の前半は、ロンドン科学博物館シニア展示マネージャのスーザン・モスマン博士、およびジン・ナーワル氏による講演からスタート。国や世代を超えてあらゆる人々の興味を惹きつけ、科学のおもしろさ、素晴らしさを発信し続ける秘訣について、その革新的な取り組みをご紹介いただきました。ロンドン科学博物館では、従来の陳列型展示に加えて、科学の前提知識がなくても、さまざまな年代、立場の来館者が楽しめるよう、参加型のイベントや魅力的な展示方法が日々検討されているとのこと。ともすれば説明ばかりで退屈になりがちな博物館で、来館者がついつい引き込まれてしまう仕掛けの数々は、どれもハッとさせられるものばかり。ゴキブリのコスチュームを纏った来館者が館内を巡り、人類絶滅後の時代を体感するイベントの事例紹介には、会場が驚きとともに笑いで溢れました。

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 講演を受けた後半は、複数のチームに分かれて行うワークショップ「東工大博物館の未来をみんなでリデザイン!」。普段なかなか足を運ぶ機会の少なかった博物館も、改めて観て回ると興味深い展示がたくさんあることに気がつきます。議論の題材としてファラデー博物館の展示事例、東工大博物館でのカフェ実施例が紹介されると、その豊かで柔軟な発想に刺激され、各チームからは絶え間なく意見が上がりました。具体的には「触れる展示」、「その技術が関連する身近なものを隣に置いた展示」、「色や名前など科学技術とは別のテーマで一貫性を持たせた展示」、「模型を作れる企画」、「大岡山地区の子供が参加できるような地域との連携」、「仕事帰りの大人も楽しめるナイトミュージアム」、「交換展示会など他博物館との連携」、「カフェと博物館の融合」、「パーティ等イベント会場としての活用」等々...展示品の並べ方から企画、空間の使い方に至るまでアイディアは多岐に渡り、最後には時間が足りなくなるほどでした。

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 今回、とくに後半のワークショップ終盤では、それぞれの参加者が学究生活を通じて科学技術をいかに魅力的に正しく相手に伝えるか、その方法を日々模索している現状が浮き彫りになりました。そして、当日の講演やディスカッションを通じて得られたヒントをもとに、自分ならばどうするか真摯に考えをめぐらせ始めた途端、各参加者が生き生きとした表情に変わり、思い思いに理想の博物館の姿を語り始める様子が印象的でした。まさに今回のトピックが自分ごとになった瞬間でした。科学技術が細分化・複雑化し、日常の中で意識することが難しい今こそ、科学技術とわたしたちの日々の生活との接点を一つひとつ丁寧にたどるコミュニケーションが大切であると強く感じたセミナーでした。

(文・今井 絢子)

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