[授業情報]メディア編集デザイニング2015
2015.09.17
デザインを批評する
グラフィック、エディトリアル、プロダクト、空間、サービス、コミュニケーション......デザインと名のつく領域は多岐に及び、日常のなかでデザインに接しないタイミングは存在しないと言えるほどです。そうした環境にあって、昨今、デザインに対する「批評」の重要性が急速に強まっています。
その大きな理由は、デザインに対してユーザーも積極的に関与することが求められているからに他なりません。ただ単にデザインされたものを受け入れるだけではなく、ユーザー自身がデザインに対して思考を重ね、意見を述べ、コミュニティやクリエーター、企業と協働していくプロセスが、デザインにおいて重要だと誰もが考えるようになってきたのです。そのプロセスに参画するために重要な要素が「批評」です。自分自身でデザインに対して思考を構築できることが必要となります。
そして「批評」を構築するための方法論、それが「編集デザイン」です。単に感想を言うだけでは批評になりません。批評に必要なのは、複数の視点による思考です。メディアを複合的に捉え、そこから多面的な思考を構築するテクニックこそが、「編集デザイン」なのです。どうすれば広く思考を集められるか、別の確度から問題を提起できるか、新たなフィロソフィーをデザインできるか......そういった部分を本講義では実践していきたいと思います。
参加者には、既存の様々な「デザイン」をモチーフとして、手と頭をめいっぱい動かし、「編集デザイン」のおもしろさを体感してもらいます。単に考えて終わりではなく、編み上げた思考を可視化する過程までが講義の内容となります。内容はハードですが、「デザイン? デザイナーの仕事でしょ。任せたわ」という態度をとるような社会人・企業人になりたくなければ、オススメです。
【受講を検討する方へ】
デザインや表現に少しでも関心があるならば誰でも参加して構いません。もちろんクリエイティブなことにチャレンジしてみたいという方も歓迎します。講義ではレポートやプレゼンが毎回課されます。「相手に自分の思考を伝えられるように、自分自身を「デザイン」したい!」という目的意識にも合致する講義になるかもしれません。
【講義日程】
10月14日(水)
10月28日(水)
11月11日(水)
11月25日(水)
12月9日(水)
12月16日(水)
いずれも13:30~16:30
【講義内容】
第一段階 デザインって何? (10月14日)
デザインが求められる場面とは何か? デザインはどのようにして社会に浸透するのか? デザイン史を簡単に俯瞰しながら、デザインの根源と、その役割を理解します。
第二段階 デザインってどうやって決まるの? (10月28日)
あるデザインが決定されるプロセスを具体的なプロダクトを例に解説します。「クライアント」や「ユーザー」、「デザイナー」など、それぞれの役割を理解しながら、どのようにデザインが社会にアウトプットされるかを学びます。
第三段階 デザインを批評してみよう (11月11日、11月25日)
実際に存在するデザインを「編集デザイン」の理念を用いて、批評してみましょう。問題はどこにあるのか? 異質なものを接合させるためには何が必要なのか? どうすればよりよいデザインの形はありえるのか? 価値のある批評を紡ぐための練習です。
第四段階 批評をデザインしてみよう (12月9日、12月16日)
批評はアウトプットしなければ価値が生まれません。自分で編み出した批評を、第三者の視点・意見を交えながらブラッシュアップしていきます。価値(フィロソフィー)をデザインできるかどうか、自分の総合力を試す段階です。
【講義場所】
大岡山キャンパス(履修登録後にメールにてご連絡します)
【対象】
学部生(大学院生も単位認定できる場合がありますので、興味のある方は教務課に確認のうえ、履修登録してください)
【履修方法】
教務Webにて申告。申告番号[5661]
【講師】
野原佳代子、川崎紀弘、川崎昌平
<川崎紀弘氏プロフィール>
クリエイティブディレクター。主なディレクションにリクルート『週刊住宅情報』、産業デザイン振興会『グッドデザイン』など。AZホールディングスに所属、デザイン教育事業の推進、イベントの企画運営などを行なっている。著書に『実例で学ぶ「伝わる」デザイン』(グラフィック社)、共著に『これからのメディアをつくる編集デザイン』(フィルムアート社)などがある。
<川崎昌平氏プロフィール>
東京藝術大学大学院美術研究科修了。作家・編集者。独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(CREST)研究員を経て、現在はフィルムアート社編集部勤務。アートと社会の接合が主な研究テーマ。著書に『ネットカフェ難民』(幻冬舎)、『若者はなぜ正社員になれないのか』(筑摩書房)、『自殺しないための99の方法』(一迅社)、共著に『これからのメディアをつくる編集デザイン』(フィルムアート社)などがある。